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千葉地方裁判所 平成7年(行ウ)18号 判決 1995年12月20日

千葉県佐倉市新町五〇番地一

原告(選定当事者)

小澤功子

(選定者四名は別紙選定者目録記載のとおり)

千葉県成田市加良部一丁目一五番地

被告

成田税務署長 近藤吉輝

東京都千代田区霞ヶ関三丁目一番一号

被告

国税不服審判所長 小田泰機

右両名指定代理人

比佐和枝

鈴木一博

今井廣明

佐久間光男

被告成田税務署長指定代理人

吉岡榮三郎

長谷川貢一

小柳誠

被告国税不服審判所長指定代理人

大平欽哉

盛岡哲雄

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告成田税務署長に対する請求

被告成田税務署長が、原告及び別紙選定者目録記載二ないし四の選定者計四名に対し、右四名が、被相続人小澤美惠子の財産を相続で取得したことによる相続税について平成五年三月三一日付の各更正処分及び各過少申告加算税賦課処分を取消す。

二  被告国税不服審判所長に対する請求

被告国税不服審判所長が、原告及び別紙選定者目録記載二ないし四の選定者計四名に対し、右四名による右各更正処分及び各過少申告加算税賦課処分に対する審査請求についてした平成七年四月五日付の右審査請求を棄却するとの各裁決を取消す。

第二事案の概要等

一  本件は、原告及び別紙選定者目録記載二ないし四の選定者(以上四名を「原告外三名」という)が、亡母小澤美惠子(平成二年三月二一日死亡)の相続人として、平成二年九月一四日にした、相続税の申告(課税価格及び相続税額のいずれも「〇円」とするもの)について、被告成田税務署長が、平成五年三月三一日付で各更正処分(原告外三名の納付すべき税額を計二七〇一万一六〇〇円とするもの、本件各更正処分)及び各過少申告加算税賦課処分(本件各賦課処分)をし、これに対する原告外三名の審査請求について、被告国税不服審判所長が平成七年四月五日付で右審査請求を棄却するとの各裁決(本件各裁決)をした(以上の事実は当事者間に争いがない)ところ、原告外三名が原告を選定当事者として、本件各更正処分、同賦課処分及び同裁決の各取消を求めた事案である。

二  本件での原告の主張は必ずしも明確ではなく、本件各更正処分、同賦課処分及び同裁決の違法一般を主張するものとみるほかないので、本件各更正処分、同賦課処分及び同裁決に関して、その違法性一般について以下検討する。

第三検討・判断

一  本件各更正処分について

1  原告外三名が相続により取得した財産について

(一) 被告成田税務署長が、本件各更正処分において亡母美惠子の遺産として原告外三名が相続により取得した財産(本件各相続財産)としたのは、別表4記載の土地、同5記載の建物、同6記載の有価証券(以上いずれも持分の二分の一)、同7記載の預金及び亡母美惠子の株式会社小沢印刷所に対する貸付金二三二四万六二三二円であるところ、これらは、いずれも亡母美惠子の遺産として原告らが相続により取得した財産であると認められる(乙二ないし二一、二七、三一、三二及び弁論の全趣旨)。

(二) また、原告外三名が相続により承継した亡母美惠子の債務は、別表1の番号7、8の計(同表番号9の小計額)であると推認される(弁論の全趣旨)。

2  相続財産額の評価と税額計算について

(一) 被告成田税務署長は、本件各相続財産のうち預金・貸付金以外のものについて、別表4ないし6記載のとおり、評価通達(相続財産評価に関する基本通達 昭和三九年四月二五日付直審(資)一七国税庁長官通達、平成三年一二月一八日付課評二-四、課資一-六による改正前のもの)及び評価基準(毎年各国税局長が定める相続税財産評価基準)に基づいて各財産を評価し、預金、貸付金及び債務についてはその金額どおりの額で評価していることは明らかである(乙二二ないし三二及び弁論の全趣旨)。そして、これら評価通達及び評価基準の内容、その運用の実情に照らすと、これらの方法によらないことが正当であると是認されるような特別の事情が認められない限り、その評価方法は妥当性を有すると解されるところ、本件各相続財産の評価については本件では、右特別の事情は見出せない。したがって、被告成田税務署長が、本件各更正処分において本件各相続財産のうちの不動産と株式については評価通達と評価基準に基づき評価し、預金・貸金及び債務についてはその金額どおりと評価して、別表1の番号1ないし10のとおりの課税評価額を算出したことは、相当であると認められる。

(二) 次に、被告成田税務署長は、本件各更正処分において、原告外三名が亡母美惠子の相続に関し納付すべき相続税額について右(一)の課税評価額を基礎に、相続税法一五条ないし一七条及び二〇条(一五条及び一六条についてはいずれも平成四年法律第一六号改正前のものお)に従って、別表1ないし3記載のとおりの計算をして各税額を算定し、本件各更正処分をしたことが認められるところ(乙二二ないし三二及び弁論の全趣旨)、本件各相続税額の計算結果に誤りは見出せない(弁論の全趣旨)。

(三) 本件では、その他に本件各更正処分を違法するとするに足りる事由は見出せない。

3  したがって、右1・2からすれば、原告外三名が、亡母美惠子の財産を相続によって取得したことにより、各納付すべき相続税の額については、別表1の番号14に各記載のとおりの額(原告外三名の各一人につき六七五万二九〇〇円)と認めるのが相当であり、被告成田税務署長において、右各金額(別表1の番号14に各記載の額)を原告外三名の各納付すべき相続税額とした本件各更正処分はいずれも適法といえる。

4  これに対し、原告は「亡父小澤喜一郎の財産がないのにこれがあると課税した違法がある」との主張をするが、その趣旨が、本件各更正処分において亡母美恵子が亡父喜一郎から相続取得したとされる財産には亡父喜一郎の財産ではないものがあるということであれば、右1の検討結果に照らし採用できないし、亡母美惠子が亡父喜一郎から相続取得した財産の評価額が「〇」円ということであれば、右2の検討結果に照らしてやはり採用できない。

二  本件各課処分について

原告外三名に課されるべき各過少申告加算税の額は、本件各更正処分により定まった納付税額(原告外三名の各一人につき六七五万二九〇〇円)を基礎にして、国税通則法六五条一、二項を適用して算出した金額となるところ、この額は、被告成田税務署長が本件各賦課処分により原告外三名に賦課した税額(原告外三七の各一人につき九八万七五〇〇円)と同額となる。そして、原告らに対する本件各更正処分は右一で認定したとおり適法であるといえるから、本件各賦課処分において本件各更正処分により原告らが納付すべきとされた各相続税額を基礎にしたことに違法はなく、本件では、他に本件各賦課処分について、それを違法というに足りる事由は見出せない。

三  本件各裁決について

原告は、本件各裁決についてもまたその違法一般を主張するのみである。

ところで、裁決取消の訴えにといては、原処分の違法を理由としてその取消を求めることはできない(行政事件訴訟法一〇条二項)のであって、原告は、本件各裁決固有の瑕疵を主張しなければならないものとされている。しかしながら、原告は、原処分である本件各更正処分及び同賦課処分の違法において主張したのと同じ実体的違法を主張する以外は、違法一般を主張するのみで何ら本件各裁決固有の瑕疵についての具体的主張をしないものであるから、その主張自体既に理由がないことになる。そして、他に本件各裁決についてその固有の瑕疵は見出せないところである。

したがって、本件各裁決については、その固有の瑕疵がいずれも見出せないから、本件各裁決は適法というべきである。

第四結論

よって、原告らの被告成田税務署長並びに被告国税不服審判所長に対する本件各請求は、いずれも理由がないからこれをいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 千徳輝夫 裁判官 大久保正道 裁判官 髙宮園美)

選定者目録

一 千葉県佐倉市新町五〇番地一

小澤功子

二 千葉県松戸市松戸一二九二番地の一

シティハイツ松戸七〇一号

小澤喜之輔

三 千葉県佐倉市鏑木町一〇四七番地三七

栁谷慶子

四 神奈川県横浜市栄区笠間町五二一番地

第二大船パークタウンD棟七〇六号室

松島淳子

別表1 課税価格等の計算明細表

<省略>

別表2 税額算出表

<省略>

別表3 相次相続控除額の計算表

<省略>

別表4 土地の価額の明細表

(1) 倍率地域の土地

<省略>

(2) 市街地農地等の土地

<省略>

(3) 路線価地域の土地

<省略>

別表5 建物の価額の明細表

<省略>

別表6 有価証券の明細表

<省略>

別表7 預金の明細表

<省略>

別表8 未納固定資産税の明細表

<省略>

別表9 未納相続税等の明細表

<省略>

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